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Title 『パラサイト』ついに日本公開で熱狂的支持
No 80 Inquiry 41 Date 2020/02/14

賞を取るということがこれほど影響力のあるものなのか。


カンヌ映画祭で最高位のパルムドールを受賞した映画『パラサイト』の日本公開を記念して、昨年末の12月26日に行われた記者会見に集まったメディアや観客の数をみて、こんな感想が頭をよぎった。来日する監督・俳優ともに、今回が始めてではない。監督・ポンジュノは以前、東京を舞台にした映画『シェイキング東京』を撮影しに東京に滞在したし、俳優ソンガンホは3年前に『弁護人』の上映に合わせて日本に来日したことがある。しかし、今回のように両日合わせて50社以上の日本のメディアがこぞって押しかけてきたことは、かつてなかったことである。記者の隣にいたほかのメディア担当者も「以前、韓国映画を扱おうとしたときは、そんなマイナーな話題は売れない、と企画は却下されたが、今回の取材にはすぐに社内で許可がおりた」という。有力な韓流専門誌でさえ「今回はテレビの取材が優先されて、結局、二人とのインタビューの時間をとってもらえなかった」という。世界各国での好反応を受けて、日本でも公開前からの期待度がいかに高潮に達しているのが、このような熱い取材合戦からもうかがえた。

 

4度目のタック、監督と俳優の来日記念イベントにサプライズ

3年ぶりに来日したソンガンホ氏は「ほかの監督とも何度か来ているが、あまり愛されてこなかった気がする。今回はポンジュノ監督と日本に来ることができたが、我々は愛される準備が十分整っています」と、得意のユーモアたっぷりに日本でもブレークすることへの期待感をにじませた。「貧富の差」をテーマに扱った『パラサイト』について、ポンジュノ監督は「是枝監督の「万引き家族」でも扱われたように、この映画に描かれた貧富格差は国境を越えて共通するテーマ。だからこそ世界各国で支持されているのではないか。日本の皆さんにどう受け止められるのかも、とても気になります。」と、日本での反応に深い関心を示した。


翌日の27日、TOHOシネマ六本木での先行上映に合わせて行われた舞台挨拶には、若手人気俳優の吉沢亮(よしざわりょう)氏が登場し、会場はさらに盛り上がった。吉沢氏は『母なる証明』が一押し映画12本の1つに入るほど、以前からポンジュノ監督の大ファン。憧れの監督に「ぜひ会いたかった」という彼は、ポンジュノ監督と同じ舞台に立つのは「夢のようだ」と緊張した表情で語った。吉沢氏は、「『パラサイト』は「ここ数年みた映画の中で圧倒的なエンタメ感」で、「いろんな要素が入った映画でありながら、一切が邪魔をせず完璧に融合されていて、絶対にみなさんが見るべき映画です」と、この映画の魅力を観客に熱く語り始めた。とくに印象的なシーンは「町中が大騒ぎしている中、トイレで妹が一服しているシーン」だそうで、ダイナミックな映画作りに「一体どうやってこんな映画を作ったのか、本当に不思議だった」。吉沢氏はさらに、「いつかポンジュノ監督の作品に出たい。そんな夢のような日がくればうれしい」と監督にラブコールを送ると、監督も「行定監督の『リバーズエッジ』でとても素敵な青春の姿を演じていましたね」と、以前から彼に注目していたことを告白、お互いに一緒に仕事ができる日がくればうれしい、と語った。吉沢亮氏はNHK朝の連続ドラマ『なつぞら』などを通じて、人気急上昇してきた実力派俳優で、もしもこの二人のコラボが決まったなら、さらに日本の若い女性ファンが韓国映画に関心を持つようになることは間違いないだろう。

 

日本のマスコミで引っ張りだこの『パラサイト』

今まであまり注目されてこなかった韓国映画界だが、カンヌ映画祭の最高賞を取ったというニュースに、日本でもにわかに韓国映画界に対して注目が集まった。ちなみに、日本での公開名は『パラサイト半地下の家族』。まず公開に合わせて、テレビ東京では「パラサイト公開記念企画」として年末にポンジュノ監督の『殺人の追憶』を放映した。また、実力派俳優の斎藤工氏と監督とのスペシャル対談を、一般公開日の翌日にあたる1月11日に放映する。斎藤氏もまた、ポンジュノ監督を敬愛してやまない俳優の1人だそうだ。また、同番組ではソンガンホ氏への独占インタビューも放映される。このほかにAbemaTVでは、稲垣吾郎氏とポンジュノ監督、ソンガンホ氏のスリーショットが実現した。さらに「チョナンガン」として韓国でもおなじみの草彅剛との電話対談も行われた。国民的人気を誇る彼らとのメディア露出は、来日した二人が、すでに世界的ビックスターであることを日本の視聴者に印象づけた。

 

寄生し、問い続ける『パラサイト』

オバマ元大統領からも「今年感動した10本の映画」の1つとして絶賛された『パラサイト』。「絶対にネタバレさせないでください」というポンジュノ監督の嘆願もあり、ここでは詳しい内容は紹介できないが、彼の作品の根底に通奏低音のように流れる「家族」や「寄生と宿主(=『怪物グエムル』の英語タイトル名)」というテーマが、日本の観客にはどう映るだろうか。ここで最後に、ある50代の日本人主婦の感想を紹介しておこう。


「数年前に見た『万引き家族』は、他人同士が本当の家族のよりも深い愛情と絆でつながる物語であるのに対し、同じ貧しい家族を描いているのに、『パラサイト』には家族による救いがない。両国の歴史を振り返ると、いくらがんばっても家族や個人の力ではうまくいかない「弱者の論理」を抱えた韓国社会と、「やれば必ずうまくいく」式の日本の「強者の論理」。徴用工問題や慰安婦問題を日本の「強者の論理」式で事を進めようとしても、日韓の間では何も解決しないということを感じました」。


ポンジュノ監督は「パラサイトは下層階級ではなく上層階級にむけて投げかけた言葉。どちらが寄生する側なのか考えてみてほしい」と某メディアのインタビューで語っている。日韓の関係では、はたしてどちらが「パラサイト」なのだろうか。

「この映画は善悪を判断する映画ではなく、私たちはどのように生きていくべきなのかを問いかけた作品なのだ」(ソンガンホ氏の記者会見より)。観客に投げかけられたこのテーマを様々な視点から考えるとき、この作品はよりいっそう私たちの胸中に、まさしく寄生虫のように深く、長く、生き続けることだろう。

 

※ 公開情報  

『パラサイト―半地下の家族』 / オフィシャルサイト : http://www.parasite-mv.jp/

 

※ 監督 : ポン・ジュノ / 出演 : ソン・ガンホ、チェ・ウシク

 ほか :  1月10日(金) TOHO シネマズ日比谷ほか全国ロードショー

 

先行上映初日には大勢の観客が押し寄せた。チケットは予約販売開始数時間後に完売。ⓒ KOFICE TOKYO


26日に行われた記者会見風景 ⓒ KOFICE TOKYO


俳優・吉沢亮氏と ⓒ KOFICE TOKYO